真夏の夜、千三百年の歴史を誇る古都・奈良が、一変して幻想的な光に包まれる――「なら燈花会」は、世界遺産に囲まれた奈良公園一帯が数万本のろうそくの灯りで彩られる、奈良の夏の風物詩です。それぞれの灯りには祈りや願いが込められ、訪れる人々の心を穏やかに照らします。静寂と温かみに満ちたこの光景は、日常を離れ、千年の都ならではの祈りの時空へと誘います。
- なら燈花会2025とは?|千年の都に灯る、夏夜の祈り
- 2025年の開催概要|日程・時間・会場をチェック
- 幻想の灯りが照らす奈良の名所|会場別・見どころガイド
- なら燈花会で感じる奈良の文化|光がつなぐ過去と今
- 期間中に開催される夜間特別拝観
- 灯りとともに泊まる奈良|周辺の宿と過ごし方
- まとめ|なら燈花会2025で“心に灯る夜”を
なら燈花会2025とは?|千年の都に灯る、夏夜の祈り
奈良の夏、夜空が深まるとともに浮かび上がる灯りの祭典――「なら燈花会2025」は、2025年8月5日~8月14日の10日間、古都・奈良公園一帯で開催されます。春日大社や東大寺、興福寺などの世界遺産を背景に、約数万本のろうそくが穏やかで神聖な雰囲気を作り出し、訪れた人々に静かな感動をもたらします。入場料は無料(一部体験・夜間拝観は有料)、小雨決行で、多くのボランティアと市民の手で紡がれる「手づくりの絶景」です。
灯りに込められた想いと願い
なら燈花会のろうそくの灯りには、一つひとつ「祈り」や「願い」が込められています。誰もが自分自身と静かに向き合い、ささやかな願いをそっと灯火に託す――この穏やかな時間が、奈良公園全体に広がります。市民や訪れる人々が参加できる「一客一燈(いっきゃくいっとう)」体験では、自身の願いや想いを灯火に託し、巨大な光の海の一部分となれるのも特徴です。
2025年の開催概要|日程・時間・会場をチェック
開催期間と点灯時間
「なら燈花会2025」は、以下の期間で開催されます:
- 開催日程: 2025年8月5日(火)〜8月14日(木)
- 点灯時間: 毎日19:00〜21:30(予定)
会場は奈良公園一帯。主なエリアとしては、浮雲園地、春日野園地、浅茅ヶ原、猿沢池、五十二段、東大寺大仏殿周辺などが予定されています。各会場で異なる灯りの演出が楽しめるのも、なら燈花会の見どころの一つです。
体験燈花会・ボランティア参加について
「なら燈花会」では来場者が実際にろうそくに火を灯すことができる「体験燈花会」が人気です。一人ひとつの灯りに想いや祈りを込めて、自分だけの灯火を奈良の地にともすことができます。浮雲園地などの主要会場にて、当日受付・数量限定で体験可能です。
また、開催期間中には毎年多くのボランティアが運営を支えています。ろうそくの設置・火付け・安全誘導・片付けなど、市民の手でつくり上げるイベントとして、ボランティア参加も魅力の一つです。参加希望者は公式サイトから事前登録が必要で、事前説明会への参加も含まれます。

幻想の灯りが照らす奈良の名所|会場別・見どころガイド
なら燈花会は、会場ごとに特色ある幻想的な演出が用意され、歴史的景観と調和することで、まるで別世界に足を踏み入れたような体験が広がります。それぞれの名所でしか味わえない「祈りの灯り」の演出と見どころを紹介します。
春日野園地|東大寺を望む“ろうそくの海”
視界いっぱいに広がるろうそくの“光の海”が最大の魅力です。奥には荘厳な東大寺大仏殿がそびえ、歴史的建造物とやさしい灯りが調和し、幻想的な景観が生まれます。 訪れた人々は、空間全体がろうそくの優しい光に包まれる静寂のなか、奈良ならではの祈りと安らぎを感じることができます。
浮雲園地|地上に流れる天の川
浮雲園地のメイン演出は、地上に一筋流れる“天の川をイメージしたろうそくの配置です。木立に囲まれた緑の広場いっぱいに、まるで星が集まったかのような幻想空間が広がるため、夜空と地上の光が溶け合う感動を味わえます。 浮雲園地は**体験燈花会**の主要会場でもあり、来場者自身が灯した願いのろうそくによって、その“天の川”が形作られる点も特長です。
浅茅ヶ原|万葉の森と竹灯りの共鳴
浅茅ヶ原は、万葉の森の静寂と竹灯り**が織りなす幽玄のエリアです。古歌に詠まれた自然豊かな森に、竹筒を使った温かみのある灯りが点在し、他のエリアとは異なる落ち着いた雰囲気が漂います。竹灯りは揺らめきながら森の奥行きを演出し、散策しながら静かな祈りの時に浸れます。
それぞれの会場が持つ独自の演出は、古都奈良ならではの歴史的背景や文化へのリスペクトが反映されており、訪れる人々に多層的な感動をもたらします。
浮見堂|水面と舟が織りなす幽玄の世界
奈良公園の浮見堂は、**池にせり出す六角形の堂**が美しい水辺のランドマーク。燈花会期間中は、静かな湖面に揺らぐ灯りが堂のシルエットを映し出し、水面には灯火の帯が描かれます。時折、手漕ぎ舟が水面をゆっくり進み、人も灯りもまるで幻想世界に紛れ込んだような幽玄の雰囲気に包まれます。風や水音、ろうそくのゆらめきが一体となり、都会では体験できない非日常の夜を演出します。
猿沢池・五十二段|伝説が蘇る灯りの回廊
猿沢池は、古くから歌にも詠まれた伝説の地であり、燈花会では水辺を囲むように灯りが並びます。池から見上げる五十二段の石段にもろうそくが並べられます。昔話や伝説が眠る場所が、キャンドルのほの灯りによって**光の回廊**へと生まれ変わり、過去と現在が静かに交差します。
春日大社|神域に捧げる燈の祭儀
燈花会のなかでも、春日大社は最も神聖な空気が漂う場所です。大社へと連なる参道や境内に、灯火が神々しく並び、数千年の時を超えた祈りが受け継がれる特別な時間帯となります。厳かな神域で灯されるろうそくは、訪れる全ての人々の願いや感謝の想いを温かく受け止める“祭儀”そのもの。世界遺産の荘厳な背景と融合した、奈良でしか味わえない灯りの体験が広がります。
東大寺・鏡池(13・14日)|大仏と灯りの競演
なら燈花会のクライマックスとも言えるのが**東大寺・鏡池エリア**。とくに8月13日・14日の2日間は特別に鏡池周辺が会場となり、東大寺大仏殿を背景に無数のろうそくが灯されます。池の水面には灯火と大仏殿の姿が美しく映り込み、圧倒的なスケールの「光と仏の共演」を間近で体感できます。静寂のなかで大仏と灯りが悠久の時をつなぐ幻想的な景観は、多くの参拝者や写真愛好家も惹きつけるスポットです。
奈良国立博物館前|歴史と芸術が交差する光
奈良国立博物館前は、歴史・文化・芸術が融合する知の空間。その正面エリアも燈花会の灯りで優雅に彩られます。重厚な博物館建築とろうそくの揺らめきが生み出す光景は、古の美術と現代のアートが交わるような独自のムードを演出。芸術に触れる一夜の体験として、静かで気品ある空間が広がります。アート好きや歴史ファンにはぜひ立ち寄りたい会場です。
春日野国際フォーラム甍|灯りと人が集う庭
春日野国際フォーラム甍(いらか)は、参加・交流型の演出が特徴の会場です。広場や庭園に並ぶ多数の燈火を囲んで、来場者同士の語らいや憩いが生まれ、イベント期間中は音楽やパフォーマンスなど多彩な催しも予定されています。温かな灯りのもと、世代や国籍を超えた交流が生まれる“集いの庭”として、なら燈花会の魅力を体感できるスポットです。

なら燈花会で感じる奈良の文化|光がつなぐ過去と今
なら燈花会の魅力は、その幻想的な美しさにとどまりません。古都・奈良で行われるこの灯りの祭典は、いにしえから続く宗教的・文化的背景を今に伝え、現代に生きる私たちと静かにつながり続けています。夜の奈良を歩きながら感じられるのは、ただの“幻想”ではなく、この地に息づく祈りと共生の精神です。
仏教・神道と「灯り」の関係
「灯(ともしび)」は仏教においても神道においても特別な意味を持ちます。 仏教では、ろうそくの灯りは「智慧の光」であり、迷いや煩悩を照らす清浄な光とされています。お盆に灯す迎え火・送り火もまた、先祖を迎え、感謝を捧げるための大切な風習です。 一方で、神道においても灯火は「清め」や「神の依り代」として重要であり、神社の境内に灯された明かりには、神聖な領域を照らし出す意味があります。
「なら燈花会」はこうした信仰の文脈の延長線上にあり、市民の手で灯されたひとつひとつのろうそくが、古来より続く祈りの形を今日まで残しているのです。
鹿と共に歩む奈良の夜
奈良といえば鹿。春日大社の神使(しんし)として守られてきた鹿たちは、奈良公園を象徴する存在であり、なら燈花会の夜にも自然と寄り添ってきます。 日が落ちてあたりが静かになると、芝生に座る鹿たちのまわりにも灯火が灯り、人と動物と自然が静かに共存する、**奈良ならではの光景**が現れます。 燈花会では鹿よけではなく、鹿にも配慮した配置と運営がされており、自然との共生という奈良の大きなテーマが、さりげなく空間に溶け込んでいます。
“灯り”が守る奈良の静けさと空気
なら燈花会は、電飾や派手な音響演出を一切用いず、ろうそくの灯だけで構成される“静けさの祭り”です。
その理由は、奈良という土地がもつ独特の空気、文化、雰囲気を損なわないため。 耳を澄ませば、虫の声、風の音、人々の足音──それらが主役になる夜。「灯り」と「静寂」が奈良の夜を包み込み、人々は目だけでなく、五感でこの地を味わうことができます。過剰な演出をしないことで見えてくる、本物の奈良の姿がそこにはあります。
なら燈花会は、見上げる夜空と足元の灯りがつながり、過去から現在、そして未来へと“文化の火”をつなぐ特別な時間を私たちに届けてくれるのです。
期間中に開催される夜間特別拝観
興福寺中金堂夜間拝観
- 開催期間:8月5日(火)〜8月14日(木)
- 拝観時間:17:00〜20:30(最終受付は20:15)
- 拝観料金:大人・大学生: 500円 /高校生・中学生: 300円 /小学生: 100円
通常の昼間の拝観とは異なり、静かな夜の中で中金堂の美しいライトアップを楽しむことができます。特に、国宝である阿修羅像やその他の重要文化財を間近で見ることができる貴重な機会です。
東大寺大仏殿夜間特別拝観
- 開催期間:8月13日(水)、14日(木)
- 拝観時間:19:00〜21:00
通常は拝観料が必要な大仏殿への入場が無料となります。特に、夜間拝観の際には大仏殿の正面にある観相窓が開放され、外から大仏様の顔を拝むことができます。この機会に、ろうそくの光に照らされた大仏様を間近で見ることができる貴重な体験となります。
東大寺万灯供養会
- 開催日時:8月15日(金) 19:00〜21:30
万灯供養会は、盂蘭盆の最終日である8月15日に行われる重要な行事。この日、大仏殿の周囲には約2500基の灯籠が設置され、灯がともされます。灯籠にはそれぞれ4つの明かりが灯され、合計で約1万の灯明が点ります。この行事は、帰省できない人々のために先祖を供養することを目的としており、1985年から続いています。
灯籠に灯がともることで、境内は幻想的な雰囲気に包まれます。また、大仏殿の正面にある観相窓が開かれ、大仏様の顔が灯火に浮かび上がる様子を拝むことができます。
春日大社中元万燈籠
- 開催日時:8月14日(木)、15日(金) 19:00〜21:30
春日大社の境内にある約3000基の燈籠(約2000基の石燈籠と約1000基の釣燈籠)に火が灯されます。これにより、幻想的な光景が広がり、訪れる人々は神聖な雰囲気の中で諸願成就を祈ることができます。
万燈籠の期間中、特別拝観が行われ、回廊内に入るための拝観料は500円です。また、献燈を希望する場合は、3000円以上の初穂料が必要です。
灯りとともに泊まる奈良|周辺の宿と過ごし方
夜まで楽しむならここ!宿泊エリアの選び方
なら燈花会を満喫するなら、奈良公園やならまち周辺の宿に滞在するのがおすすめです。歴史あるホテルや町家をリノベーションしたブティックホテルなど、特別な夜にふさわしい宿が揃っています。
- 奈良ホテル
明治42年創業の奈良を代表するクラシックホテル。和洋折衷の重厚な建築と格式の高さは「関西の迎賓館」と称され、多くの著名人を魅了してきました。旧大乗院庭園を敷地に含み、歴史ロマンが漂う滞在を楽しめます。燈花会会場の主要エリアへも徒歩圏内。奈良ホテルの宿泊予約
- SETRE NARAMACHI(セトレならまち)
猿沢池の畔、興福寺五重塔を望む抜群のロケーション。吉野杉を配した上質な客室、奈良の旬を味わうダイニング、特別なラウンジなど、自然と伝統が調和した癒やしの滞在が魅力。ならまちの情緒も堪能でき、家族連れやカップルにも好評です。セトレならまちの宿泊予約
- NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち
明治期の酒蔵をリノベーションしたスモールラグジュアリーホテル。全室異なる設えの特別な空間で、酒粕風呂や日本酒と料理のマリアージュなど、奈良らしい体験が楽しめます。歴史と現代が交差する大人の宿。NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまちの宿泊予約
このほかにも、猿沢池周辺や近鉄奈良駅・JR奈良駅周辺には、さまざまなスタイルの宿泊施設が揃っています。燈花会の夜まで余韻を味わえる場所、立地・雰囲気・設備で選ぶのがポイントです。
燈花会とセットで楽しみたい、「ならまち」の風情あるお店
なら燈花会散策とあわせて立ち寄りたいのが、歴史ある町家が立ち並ぶ「ならまち」エリア。夕暮れから夜にかけて、燈花会の光に包まれるこの一帯には、情緒あるカフェやレストラン、和菓子店、工芸や雑貨ショップが点在しています。
- 町家カフェ:築100年超の町家を利用したカフェで、地元産の大和茶や和のスイーツを味わうひとときは格別です。
- 和菓子店:奈良銘菓の「吉野本葛」や鹿をモチーフにした生菓子など、手みやげにもぴったり。
- 奈良町工房・ギャラリー:手作り雑貨やアート作品のショップ・工房巡りも、ならまちならではの楽しみ。
- 町家レストラン:古民家でいただく和食や創作料理。落ち着いた灯りの中で地元の味を堪能できます。
どのお店も燈花会の会場に立ち寄れる距離にあるため、夜の奈良ならではの風情とあわせて、ゆっくりと旅の余韻を楽しめます。
まとめ|なら燈花会2025で“心に灯る夜”を
光と静寂に包まれる、奈良だけの夏体験
なら燈花会2025は、千年の都・奈良の歴史と、祈りや願いが交差する特別な夏の祭典です。世界遺産や豊かな自然が夜の闇に溶け込み、数万本のろうそくが静かに輝く光景は、ここでしか出会えない幻想的な「夏夜の体験」を約束してくれます。
耳を澄ませれば、鹿の足音や虫の声、そして人々のささやきが、ろうそくの光とともに優しく心に届きます。華やかさではなく、静けさや祈りに包まれたひととき――それこそが奈良ならではの魅力です。
未来へ続く“祈りの灯り”をあなたの手で
なら燈花会は、ただ「観る」だけの祭りではありません。一つひとつの灯りには、訪れる人々や支えるボランティアの願い、そして奈良の人々のもてなしの心が宿っています。「一客一燈」として、自らの想いをこめて火を灯す体験は、この土地の祈りや願いを“未来”につなげる大切な営みとなります。
ささやかな灯が、やがて大きな光の海となり、今を生きる私たちと、遥か昔から紡がれてきた祈りを静かにつないでいく――。どうぞ今年の夏は「なら燈花会2025」で、心にそっと火が灯る特別な夜を過ごしてみてください。その灯りは、きっとこれからのあなたの道も、やさしく照らしてくれるはずです。