1634年に始まり、国指定重要無形民俗文化財にも認定されている長崎くんち。2025年も10月7日から3日間、6つの踊町が傘鉾や龍踊、川船など多彩な演し物を奉納します。今年ならではのプログラムや披露時刻、文化的背景まで詳しく紹介します。
- 長崎くんち2025|開催概要と日程
- 長崎くんちの歴史と起源
- 2025年の出演踊町と演し物一覧
- 奉納踊の披露スケジュール
- まち全体が舞台になる「庭先回り」
- 文化的価値と観光資源としての長崎くんち
- 長崎くんち2025を楽しむための実用情報
- 混雑回避の観覧スポットとアクセス
長崎くんち2025|開催概要と日程
2025年の開催スケジュール
- 10月7日(火)
7:00に諏訪神社で演し物の奉納が開始され、その後、公会堂前広場からお旅所へと場所を移して演し物が披露されます。午前の奉納終了後、長崎市内の会社や官公庁、民家の前での披露もあります。16:00からは「くんちの夕べ」と呼ばれる午後の奉納踊りがおこなわれ、公会堂前広場でも演し物が披露されます。 - 10月8日(水)
7:00に八坂神社で演し物の奉納が行われ、その後、公会堂前広場で再演されます。奉納踊の終了後、市内各所でも披露があります。 - 10月9日(木)
7:00にお旅所で演し物の奉納があり、その後諏訪神社に場所を移して再演が行われます。
主な開催会場
長崎くんちの主な会場は4箇所です。
各会場には観覧席が設けられており、座って見物する場合は6月から8月までに予約購入が必要です。公会堂前広場の観覧券はインターネットでも購入可能ですが、他の会場は現地購入となります。会場以外にも、町中で踊りや演し物が披露される「庭先回り」(にわさきまわり)も祭りの重要な要素です。移動には長崎市内を運行する路面電車が便利で、1日乗車券もあります。
長崎くんちの歴史と起源
1634年に始まった奉納踊りの物語
長崎くんちは1634年(寛永11年)に始まりました。当時の長崎奉行の神尾備前守、榊原飛騨守の援助のもと、諏訪神社の初代宮司・青木賢清が秋の例大祭を定めました。起源は、当時の太夫町(後の丸山町・寄合町の前身)にいた二人の遊女、高尾と音羽が諏訪神社の神前で謡曲「小舞」を奉納したことにさかのぼります。この神事はキリシタン宗教の取り締まりを背景に始まり、祭礼は町人の厄除けや平和を祈るためとされました。初期の祭りは9月7日から9日にかけて行われ、神輿渡御や奉納踊りが含まれていました。
国指定重要無形民俗文化財への歩み
長崎くんちは長い歴史の中で地域の伝統として大切にされ、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。文化財としての指定は、祭の芸能性や歴史的な価値が評価された結果で、観光振興にもつながっています。諏訪神社の秋の大祭として、長崎の伝統芸能や町の結束を象徴する意味合いを持っており、現在に至るまで多くの保存活動が続けられています。
国際色豊かな港町・長崎ならではの文化融合
長崎は江戸時代に唯一の海外貿易の窓口であり、出島にオランダ商館が置かれ、ポルトガル、スペインからの宣教師や商人も訪れました。この国際港町としての役割は、長崎くんちの文化にも影響を与えています。異文化が交差する中で祭りの演目や神事に多様な要素が取り入れられ、日本の伝統と外来文化が融合した独特の祭礼となりました。例えば「龍踊り(じゃおどり)」は中国から伝わったとされる龍の舞で、長崎らしさを伝えています。

2025年の出演踊町と演し物一覧
今年登場する7年に一度の踊町ラインナップ
2025年の踊町は本来7町の予定でしたが、1町(金屋町)が人手不足で辞退したため、以下の6町が出演します。これらの踊町は約7年に一度の持ち回りで参加します。今回は2015年に出演した町々のラインナップで、新型コロナの影響で10年ぶりの参加となります。
- 西古川町(にしふるかわまち)
- 新大工町(しんだいくまち)
- 諏訪町(すわまち)
- 榎津町(えのきづまち)
- 賑町(にぎわいまち)
- 新橋町(しんばしまち)
各踊町の代表的な演し物の見どころ
- 西古川町
傘鉾(かさぼこ)、櫓太鼓(やぐらだいこ)、本踊(ほんおどり)
太鼓の力強さと静謐な本踊りの対比が見どころです。 - 新大工町
傘鉾、詩舞(しぶ)、曳壇尻(ひきだんじり)
優雅な詩舞と迫力ある曳壇尻の演出が特徴的。 - 諏訪町
傘鉾、龍踊(じゃおどり:青龍・白龍)
長崎くんちの代名詞とも言える龍踊りは、青白2体の大龍が同時に舞う豪華で迫力満点の演出。演者が衣装を瞬時に入れ替える「棒交代」も圧巻です。 - 榎津町
傘鉾、川船(かわふね)
伝統の川船は武装船団を模した迫力のある踊りで、海の町長崎の歴史を感じさせます。 - 賑町
傘鉾、大漁万祝恵美須船(たいりょうまいわいえびすぶね)
恵美須船は江戸時代からの大漁祈願の踊りで、活気あふれる祝祭の様子が特徴です。 - 新橋町
傘鉾、本踊、阿蘭陀万歳(おらんだまんざい)
オランダ文化の影響を感じさせる阿蘭陀万歳は長崎ならではの外国文化の融合を示す演し物です。
演し物に込められた歴史的・文化的背景
- 龍踊(諏訪町)は、中国から伝わった龍を模した踊りで、長崎の国際港町としての歴史が演目に色濃く反映されています。青龍・白龍の舞は神秘的で、疫病退散や豊漁祈願の意味が込められています。
- 阿蘭陀万歳(新橋町)は、オランダからもたらされた祝いの踊りで、長崎での異文化交流の象徴。江戸時代の鎖国下でも制限された貿易を通じて、西洋文化が融合した芸能として知られています。
- 川船(榎津町)や大漁万祝恵美須船(賑町)は、長崎の港町としての漁業や海運の歴史を背景に持ち、地域の安泰や豊漁を祈願する伝統的な踊りです。
- 傘鉾や櫓太鼓は各町の誇りを表す華やかな装飾と独特の太鼓音で、地域の結束や祭りの神聖さを体現しています。
奉納踊の披露スケジュール
10月7日(火)
| 新橋町 | 諏訪町 | 新大工町 | 榎津町 | 西古川町 | 賑町 | |
| 諏訪神社 | 7:00 |
7:30 |
8:00 |
8:30 |
9:00 |
9:30 |
| 中央公園 | 8:10 | 8:40 | 9:10 | 9:40 | 10:10 | 10:40 |
| お旅所 | 9:10 | 9:40 | 10:10 | 10:40 | 11:10 | 11:40 |
| 終了予定 | 9:40 | 10:10 | 10:40 | 11:10 | 11:40 | 12:10 |
| 諏訪神社 | 16:00 |
16:30 |
17:00 |
17:30 |
18:00 |
18:30 |
| 中央公園 | 17:10 | 17:40 | 18:10 | 18:40 | 19:10 | 19:40 |
| 終了予定 | 17:40 | 18:10 | 18:40 | 19:10 | 19:40 | 20:10 |
10月8日(水)
| 西古川町 | 賑町 | 新大工町 | 諏訪町 | 新橋町 | 榎津町 | |
| 八坂神社 | 7:00 | 7:30 | 8:00 | 8:30 | 9:00 | 9:30 |
| 中央公園 | 8:00 | 8:30 | 9:00 | 9:30 | 10:00 | 10:30 |
| 終了予定 | 8:30 | 9:00 | 9:30 | 10:00 | 10:30 | 11:00 |
10月9日(木)
| 榎津町 | 新橋町 | 諏訪町 | 西古川町 | 賑町 | 新大工町 | |
| お旅所 | 7:00 | 7:30 | 8:00 | 8:30 | 9:00 | 9:30 |
| 諏訪神社 | 8:20 | 8:50 | 9:20 | 9:50 | 10:20 | 10:50 |
| 終了予定 | 8:50 | 9:20 | 9:50 | 10:20 | 10:50 | 11:20 |
まち全体が舞台になる「庭先回り」
長崎くんちの「庭先回り」は、まち全体が舞台になる無料の路上パフォーマンスで、各踊町が長崎市内の事業所や官公庁、店舗や民家の前で短い踊りやお囃子を披露し、福をおすそ分けする伝統的な交流の場です。
無料で楽しめる路上パフォーマンス
庭先回りは、長崎くんちの3日間(10月7日~9日)にかけて市内中心部を各踊町が練り歩き、住宅や事業所、店先の前で演し物を呈上します。派手な奉納踊りとは異なり、気軽に間近で伝統芸能を楽しむことができるため、観光客や地域住民に人気のあるイベントです。アンコールのかけ声が飛び交うなど、参加者も盛り上がります。
地域住民と観客をつなぐ交流の場
庭先回りは、地域住民や店舗の人々との近い距離での交流を促進します。踊町が訪れて踊りを披露することで、その場所に福をもたらし、感謝とお祝いの気持ちを共有する場となっています。観客も手軽にパフォーマンスに触れ、地域文化に参加できることから、地域と観光客をつなぐ重要な交流の場として機能しています。
文化的価値と観光資源としての長崎くんち
長崎の宗教・交易史との関係
長崎くんちは1634年から続く長崎諏訪神社の秋の大祭で、多彩な奉納踊りを含む伝統文化として重要視されています。祭り自体は長崎の歴史的な宗教行事であり、長崎が江戸時代の唯一の海外貿易港としてオランダやポルトガルなど異国文化と交流する中で形成された独自の文化融合の象徴です。長崎くんちの出し物には中国由来の龍踊りやオランダの影響を受けた阿蘭陀万歳などが取り入れられ、宗教的な祭礼に加え多文化交流の歴史を反映しています。また、隠れキリシタンの信仰継承地として有名な長崎と天草地方の宗教的歴史も背景にあり、地域の宗教的多様性が長崎くんちの文化的価値を高めています。
長崎くんち2025を楽しむための実用情報
観覧席チケットの種類と購入方法
観覧席チケットの種類は次の通りです。
- 砂かぶり椅子席(西・東)
パイプ椅子で近くで演し物を観覧できる席。1人7,000円。 - スタンドS席
腰掛け式のベンチシートで前方列(西日は7列目まで、8日は6列目まで)。
1人6,500円。 - スタンドA席
腰掛け式ベンチシートで後方列。1人4,500円
全席指定席で座席の個別指定はできません。子供料金はなく2歳未満乳幼児は大人の膝上鑑賞可。ペット持込不可。公演により招待席もありますが販売対象外です。
観覧席チケットの購入方法は次の通りです。
- 観覧席チケットは全国の「セブン-イレブン」店頭の端末機とインターネットの「チケットぴあ」サイトで販売されます。セブン-イレブンの端末で購入する場合は、Pコード「656-845」を利用してください。
- インターネットで購入する場合、チケットぴあの専用ページから申し込むことが可能、支払いにはシステム利用料や発券手数料が別途かかります。
- チケットの購入は1回の購入につき同一公演日・同席種で最大8枚まで可能です。座席の位置指定はできず、席種のみを選択する形となります。
- 長崎商工会議所での販売や電話販売はありません。
混雑回避の観覧スポットとアクセス
長崎くんちは主に「諏訪神社」「お旅所」「八坂神社」「長崎市公会堂前広場」の4会場で演し物が披露されます。各会場には観覧席が設けられていますが、混雑を避けたい場合は以下の点に注意するとよいでしょう。
- 庭先回り(町内巡回の無料路上公演)は座席不要で近くで楽しめますが、多くの観客が集まるため早めの場所取り推奨。
- 路面電車やバスなど公共交通機関を利用し、車の混雑や駐車場問題を避けることが重要です。
- 公会堂前広場は徒歩でもアクセスしやすく、市街中心部の散策に便利です。
- 比較的混雑が緩やかな午前の奉納や最終日の朝の演目を狙うと快適です。
土地勘がない場合は現地案内やスマホアプリでの情報確認がおすすめです。
祭り期間中の街歩きとおすすめ観光ルート
長崎くんちは町全体が舞台となっているため、祭りの鑑賞だけでなく街歩きも楽しめます。
- くんち期間中(10月7日~9日)に市内中心部を散策しながら「庭先回り」を楽しむ。各踊町が町内の事業所や民家の前で披露します。
- 主要観覧会場を結ぶ路面電車や徒歩で移動し、複数の演し物や異なる雰囲気の会場を体験。
- 近くにある観光スポット(出島、オランダ坂、グラバー園など)を巡り、長崎の歴史や文化もあわせて楽しむ。
- 非日常の祭り空間のなかで長崎の国際色あふれる街並みと祭り文化を堪能。