- 松江水燈路とは?|城下町を照らす光の祭典
- 松江城の歴史と魅力
- 城下町・松江の歴史情緒を歩く
- 水燈路を彩る見どころ
- 2025年の開催情報
- アクセス・交通規制・シャトルバス情報
- 松江の夜をさらに楽しむ
- まとめ|光と歴史に包まれる松江の夜
松江水燈路とは?|城下町を照らす光の祭典
「松江水燈路(すいとうろ)」は、島根県松江市で毎年秋に開催される光の祭典です。宍道湖や堀川に囲まれた水の都・松江の街並みを、数多くの行燈(あんどん)のやわらかな光が彩ります。日中は城下町の落ち着いた雰囲気を楽しみ、夜には幻想的な光景へと姿を変える――そのギャップこそが、このイベントの大きな魅力です。観光客だけでなく、地元の方々にとっても心待ちにされている秋の風物詩となっています。
国宝・松江城を舞台にした光のイベント
松江水燈路の中心的な舞台は、“千鳥城”の愛称を持つ国宝・松江城です。夜の帳が下りると天守閣を背景に、城山公園や堀川沿いが行燈の灯りで埋め尽くされます。静かな水面に揺れる光は、まるで過去と現在をつなぐ橋のよう。昼間に見る凛々しい松江城とは異なり、幻想的で温かみのある姿に出会えるのは水燈路ならではです。夜の天守閣見学ができる日もあり、歴史と光が融合した特別な時間を体験できます。
行燈文化が受け継ぐ松江の夜
水燈路を象徴するのが、松江市民や子どもたちが手作りした約1,000基以上もの行燈。その一つひとつには、絵や書が描かれ、光を透かすとまるで物語が浮かび上がるよう。江戸時代から武家屋敷や町家で使われてきた「行燈文化」が、今もこうして受け継がれ、現代の祭りに息づいています。散策する人々は、それぞれ趣向を凝らした作品を眺めながら夜の街を歩き、心の交流を楽しんでいます。城下町に灯る光は、単なる装飾ではなく、人々の温もりを感じさせる"文化の灯り"でもあるのです。

松江城の歴史と魅力
水燈路の舞台となる松江城は、ただの観光名所ではなく、城下町松江の象徴ともいえる存在です。威風堂々とした姿を残し続ける国宝天守は、日本各地に現存する12天守のひとつで、歴史と文化を語り継ぐ貴重な遺産。松江水燈路の幻想的な雰囲気を理解するには、まずこの城の歩みと魅力を知っておきたいところです。
堀尾吉晴が築いた山陰の名城
松江城が築かれたのは慶長16年(1611年)。その基礎を築いたのは、豊臣政権から徳川政権へと仕えた武将・堀尾吉晴です。中国山地を背に、宍道湖と中海の水運をにらんだこの城は、防御と交通の要衝の両面を兼ね備えた戦略的な立地にありました。湖と堀川を取り込み、城下町と一体となった「水の城」として発展した点が大きな特徴で、いまも松江の街並みにその名残を感じることができます。
松平不昧公と茶の湯文化の薫り
江戸時代中期から後期にかけて、松江藩を治めた名君・松平治郷(通称:松平不昧公)は、茶の湯と和菓子文化を大成させたことで知られています。彼の時代に松江では独自の茶道文化が育まれ、市民生活に深く根づきました。その精神は「茶の湯の城下町」として今も受け継がれ、水燈路の行燈の温かな光ともどこか通じる趣を感じさせます。茶会が開かれる会場や、城下町の和菓子処を巡る楽しみも、松江観光の大きな魅力です。
国宝天守に浮かび上がる幻想的な夜景
松江城は全国で5つしかない国宝天守のひとつ。黒い下見板張りの外観から「千鳥城」とも呼ばれ、武骨でありながら優雅な姿をしています。水燈路の夜には、この天守が行燈やライトアップに包まれて闇の中に浮かび上がり、昼間とは全く違う表情を見せてくれます。水辺に映るシルエットや、城郭を包み込むような光の揺らぎは、訪れた人々を時空を超えた世界へと誘うでしょう。
夜間登閣で楽しむ特別な眺望
水燈路の期間中は、松江城天守への夜間登閣が特別に解放される日があります。天守最上階から見渡す城下の光景は必見。眼下には堀川を縁取る行燈のきらめき、さらに遠方には宍道湖の夜景が広がります。城下町のあちこちに点在する灯りの帯は、まるで街全体がひとつの作品になったかのよう。昼間には味わえない非日常の眺めに、多くの来場者が時間を忘れて見入ってしまいます。

城下町・松江の歴史情緒を歩く
松江水燈路の魅力は、光そのものだけでなく、行燈が彩る舞台――城下町・松江の街並みにもあります。侍の暮らしを伝える武家屋敷、今も生活の息づく町屋、静かに流れる堀川。江戸時代から続く景観がライトアップの光に浮かび上がると、まるで時を遡ったかのような感覚を覚えるはずです。
武家屋敷に残る江戸の面影
松江城の北側に広がる塩見縄手(しおみなわて)周辺には、往時の姿をとどめる武家屋敷が点在しています。白壁と黒板塀、石畳の道が織りなす景観は、江戸時代の侍町そのもの。水燈路の期間中は、この一帯にも行燈が並べられ、しっとりとした歴史情緒をいっそう深めてくれます。昼間は資料館や庭園を見学し、夜は行燈に照らされた佇まいを鑑賞する――そんな二度の楽しみ方ができるのも松江ならではです。
堀川沿いを彩る水燈路の行燈
城下町をめぐる堀川は、松江の景観に欠かせない存在。日中は遊覧船が行き交い、城下の観光に欠かせない名物となっています。夜になるとその水辺に無数の行燈が設けられ、水面に映る光がゆらゆらと揺れて幻想的な雰囲気を生み出します。川沿いを歩くだけで、まるで光の回廊を散策しているよう。歴史ある石橋や柳並木もライトアップで浮かび上がり、散歩のひとときをより一層特別にしてくれます。
町屋や茶屋に息づく松江の暮らし
松江の魅力は、観光向けの風景だけでなく、人々の暮らしそのものにあります。町屋造りの建物や古い茶屋では、今も地域の人々が日々の営みを営み、訪れる人を温かく迎えてくれます。とりわけ茶文化が息づく松江では、散策の途中に立ち寄れる茶房や和菓子店が点在し、ほっと一息つく楽しみも。また、行燈のデザインには市民や子どもたちの思いが込められており、光の一つひとつが地域の温もりを映し出しています。旅人は、ただ観賞するだけでなく、この街に根づく暮らしのリズムを感じながら歩くことができるでしょう。
水燈路を彩る見どころ
松江水燈路の魅力は、街を彩る行燈やライトアップだけではありません。市民が参加してつくりあげるイベントや、普段は立ち入れない歴史的建物の特別公開など、多彩な企画も楽しめます。訪れるたびに新たな発見があり、何度歩いても飽きないのがこの祭りの魅力です。
手作り行燈コンテストと市民参加
水燈路を象徴する「行燈」は、市民や子どもたち、さらには観光客の参加によって毎年新たな作品が生み出されています。特に注目は「手作り行燈コンテスト」。個性豊かなデザインやユーモラスな作品、繊細な美術作品のような行燈まで幅広く揃い、街を歩く人々の目を楽しませてくれます。行燈に描かれるモチーフは風景や人物、メッセージなどさまざまで、まさに松江の人々の想いが光となって街を包み込む瞬間です。鑑賞するだけでなく、自分も創り手の一人になれることが、このイベントを特別なものにしています。
興雲閣や歴史館の夜間開放
水燈路の期間中には、普段は日中にしか見学できない歴史的建物が夜間特別公開されるのも大きな魅力です。その代表が「興雲閣」。明治時代に建てられた洋風木造建築で、夜にはライトアップされ、行燈の光と調和して異国情緒あふれる姿を見せます。また、「松江歴史館」も夜間開館され、武家文化や松江の成り立ちを学びながら光のイベントを楽しむことができます。歴史的な資料や展示に触れた後、実際に町を歩いてみると、城下町に生きる歴史をより深く体感できるでしょう。

2025年の開催情報
松江水燈路2025は、国宝松江城周辺を中心に開催される光の祭典です。街を静かに照らし出す光の演出が、秋の夜を幻想的に彩ります。以下に、2025年の開催日程やアクセス情報をまとめました。
開催日程と時間
2025年の開催期間は、9月27日(土)から10月19日(日)までの間の土日祝日、計9日間となっています。具体的な開催日は以下の通りです。
- 9月27日(土)、28日(日)
- 10月4日(土)、5日(日)
- 10月11日(土)、12日(日)、13日(月・祝)
- 10月18日(土)、19日(日)
アクセス・交通規制・シャトルバス情報
【アクセス】
- 車の場合は、山陰自動車道「松江西」インターチェンジから県庁・松江城方面へ約10分のアクセスです。
- 公共交通機関利用の場合、JR山陰本線「松江駅」からはレイクラインバスで約10分、「松江城大手前」バス停で下車すると便利です。
【駐車場・シャトルバス】
- イベント当日は、駐車場が600台分用意されています。
- JR松江駅と水燈路会場間を結ぶ無料シャトルバスが土日祝日に運行されるため、車でのアクセスに不安がある方も安心です。
- 土日祝日には無料のおもてなし駐車場も一部ありますが、混雑が予想されるため公共交通機関の利用がおすすめです。
【交通規制】
- 期間中は会場周辺で交通規制が行われる場合がありますので、公式サイトや現地案内で最新情報の確認をおすすめします。
- 開催時間は各日とも18:00から21:00までです。幻想的な光の演出が、日没後の城下町を優しく包み込みます。入場は無料で、どなたでも気軽に訪れることができます。
松江の夜をさらに楽しむ
松江水燈路は、幻想的な夜景だけでなく、城下町の夜を満喫できる多彩な楽しみが揃っています。イベントでゆったり散策した後は、松江ならではのグルメや観光スポットを堪能して、特別な宵を過ごしてみませんか。
宵のひとときを彩る松江グルメ
松江は「茶の湯文化」や宍道湖の恵みに支えられた美食の街です。夕暮れ時には、堀川沿いの和カフェや老舗の和菓子店で、抹茶や季節の和菓子を味わうのがおすすめ。特に有名なのが「出雲そば」や、宍道湖産しじみをふんだんに使った「しじみ汁」、「松江おでん」など、地元食材を使った温かい料理です。また、松江駅周辺や城下町には、地酒や地ビールを楽しめる居酒屋も豊富にあります。水燈路の行燈めぐりとあわせて、松江の“宵グルメ”を堪能すると、旅がより思い出深いものになります。
周辺観光とあわせた旅プラン
松江城や堀川遊覧船のほかにも、松江には見どころがたくさん。日中は国宝・松江城の見学や武家屋敷の散策、「松江歴史館」で歴史ロマンに触れたり、「小泉八雲記念館」で異国の作家の足跡を辿るのもおすすめです。また、宍道湖の夕日スポットとして知られる「宍道湖畔」や、温泉街「玉造温泉」にも足を延ばせます。玉造温泉で日帰り入浴や宿泊をして、旅の疲れを癒すのも贅沢な選択です。水燈路の幻想的な夜と、城下町・湖・温泉地の魅力を組み合わせて、充実した松江旅をプランニングしてください。
まとめ|光と歴史に包まれる松江の夜
松江水燈路は、単なる光のイベントに留まらず、城下町・松江の歴史と文化を優しく照らし出す特別な祭典です。国宝松江城を中心に、江戸時代から受け継がれてきた行燈文化が融合し、訪れる人々に心温まる夜の散策を提供します。水面に映る灯り、武家屋敷の静けさ、そして市民の手作りによる行燈の数々は、まさに松江の“心”が灯る瞬間と言えるでしょう。
水燈路が伝える城下町の心と文化
この祭りの魅力は、ただ美しい光景を楽しむだけでなく、松江らしい暮らしや歴史、そして地域の人々の想いを感じられることにあります。行燈のひとつひとつに込められた思いや、城下町の静謐な佇まいは、訪れた誰もが時の流れを忘れ、心に深い癒しと感動を得られるでしょう。松江水燈路は、歴史と文化を現代に伝える「光の架け橋」として、これからも多くの人々に愛され続けるに違いありません。
秋の松江で、光と歴史に包まれる幻想的な夜をぜひ体験してみてください。