大分県西部の城下町、竹田。古くは岡城の城下町として栄え、今なお武家屋敷や石垣が歴史の面影を色濃く残すこの町が、晩秋の三日間、約2万本の竹灯籠の光に包まれます。それが「たけた竹灯籠・竹楽(ちくらく)」です。
里山の恵みと、まちを愛する人々の手によって灯される幻想的な光景は、訪れる人々の心に、温かく、そして深く、歴史情緒を訴えかけます。
- 竹田の町に灯る“竹の灯り”|たけた竹灯籠「竹楽」とは
- 竹楽八景めぐり|光と影が織りなす幻想の八景
- 竹田の歴史を感じて歩く|城下町の面影と灯り
- 竹灯りとともに味わう竹田の夜
- 開催情報・アクセス
- まとめ|竹田の光が語る、まちと人の物語
竹田の町に灯る“竹の灯り”|たけた竹灯籠「竹楽」とは
放置竹林を灯りへと変えた市民の手づくりイベント
「竹楽」は、大分県竹田市の市民ボランティアが主体となって運営する、手づくりの竹灯籠(たけとうろう)まつりです。かつて竹細工の材料として重宝された竹は、現在では需要が減り、里山では放置竹林が大きな問題となっています。この「放置竹林」の整備で切り出された竹を有効活用し、美しい灯りへと生まれ変わらせたのが、このイベントの始まりです。
平成から続く“里山再生とまちづくり”の象徴
竹楽は、1998年(平成10年)に、地元の若者たちが立ち上げたのが始まりで、今では「里山保全竹活用百人会」を中心とした、町をあげての取り組みへと発展しました。単なるお祭りではなく、「里山再生」と「まちづくり」を同時に実現するための活動であり、竹の伐採から、デザイン、竹筒の穴あけ、そして当日点火に至るまで、全てが市民の手によって行われています。竹灯籠の光には、里山への感謝と、未来へ美しい町をつなげたいという、竹田の人々の強い想いが込められています。
2万本の竹灯籠が描く幻想の夜景
竹田城下町の街並み全体が、巨大なアート作品へと姿を変えます。約2万本もの竹灯籠が、石畳の道や白壁、古い石垣の陰影を優しく照らし出し、幽玄で幻想的な光の空間を創出します。ゆらゆらと揺らめく光の一つ一つが、歴史の面影を残す城下町に命を吹き込み、まるで時を超えた別世界へ迷い込んだかのような錯覚を覚えます。
竹楽八景めぐり|光と影が織りなす幻想の八景
竹楽の会場となる城下町一帯には、特に竹灯籠の美しさが際立つ「竹楽八景」が設けられています。それぞれのスポットで、光と影が織りなす個性豊かな幻想美を堪能できます。
十六羅漢
竹田駅から徒歩数分の場所にある岩壁に彫られた十六羅漢像が、竹灯籠の光に浮かび上がります。厳かな仏像と、柔らかな竹の灯りのコントラストは、静寂の中にも力強い祈りの情景を感じさせます。
瀧廉太郎記念館前
竹田市出身の世界的音楽家、瀧廉太郎の記念館前では、音楽の調べにも似た、繊細で美しい竹灯籠の配列が来場者を迎えます。
西の宮神社
神社の石段や境内を埋め尽くす竹灯籠は、夜の闇の中に荘厳な光の道を作り出し、神聖な空気を演出します。
殿町児童公園
広場には、竹筒を使ったオブジェや、趣向を凝らした竹の造形物が並び、他のエリアとは一味違ったアート空間が広がります。
武家屋敷通り
江戸時代からの面影を残す武家屋敷が並ぶ通り。竹灯籠の灯りが、当時の侍たちの暮らしに思いを馳せさせるような、静謐な趣きを醸し出します。
弥五兵衛坂
岡城跡へと続く坂道に沿って並べられた竹灯籠が、まるで天に昇る光の龍のように連なり、視覚的なダイナミズムを感じさせます。
廣瀬神社
境内を優しく照らす竹灯籠の光は、訪れる人々に安らぎを与えます。特に石段からの眺めは絶景です。
向丁白壁通り
歴史ある白壁の土塀沿いに並ぶ竹灯籠が、竹田ならではの落ち着いた景観美を際立たせます。
竹田の歴史を感じて歩く|城下町の面影と灯り
岡城跡に見守られる“石垣のまち”
竹田市は、難攻不落の「岡城」を擁した城下町です。竹田の町並みは、その岡城跡の石垣から切り出された石を使った石垣が数多く残されており、「石垣のまち」とも呼ばれています。竹楽の竹灯籠は、この歴史を刻んだ石垣や土塀の陰影を際立たせ、岡城跡の雄大さとともに、竹田の歴史の重みを光で語りかけます。
商人町・武家屋敷が残る町並みの魅力
JR豊後竹田駅周辺から岡城へと続く道筋には、当時の武家屋敷の長屋門や、商家が立ち並んだ「商人町」の面影が今に残ります。竹灯籠が灯されることで、江戸から昭和にかけての歴史が凝縮されたこの町並みが、より一層、趣深いものとなり、歩く人々を魅了します。
竹田に息づく文化と信仰のかたち
町中には、キリシタン史跡や古くからの神社仏閣、そして滝廉太郎をはじめとする芸術文化の足跡が点在しています。竹楽は、これらの歴史的・文化的なスポットを光で結びつけ、竹田に息づく多様な文化と信仰のかたちを、やさしく照らし出しています。
竹灯りとともに味わう竹田の夜
スローフード屋台村で味わうご当地グルメ
竹楽の会場では、地元竹田の特産品や、里山保全の活動に連動した地域の食を集めた「スローフード屋台村」が開かれます。地元の食材を活かした「おいしい」「健康的」なご当地グルメを、竹灯籠の温かい光の中で味わうことができます。竹田の人々との交流の場としても賑わいます。
温泉や古民家カフェでひと休み
竹田市には、久住高原の温泉郷など、疲れを癒せるスポットも豊富にあります。また、城下町には、古民家を改装した趣のあるカフェや食事処もあり、幻想的な夜の散策の前に、または後に、静かに落ち着いた時間を過ごすことができます。
竹田の人たちが紡ぐ“おもてなし”の心
竹楽の最大魅力は、市民が主体となって作り上げる「おもてなしの心」です。竹灯籠一つ一つに込められた愛情と、会場で出会う地元の人々の温かい笑顔が、訪れた人々の心に残る感動を紡ぎます。この竹楽は、里山と人が共存し、未来へ向けて町を大切に守り育てていく、竹田の人々の生き方そのものなのです。
開催情報・アクセス
開催日程と点灯時間
- 開催日程: 2025年11月21日(金)〜11月23日(日)
- 点灯時間: 16:00〜21:30(最終日23日は21:00まで)
シャトルバス・駐車場・臨時列車情報
- 専用駐車場: 竹田市役所、竹田市総合運動公園など、臨時駐車場が用意されます。
- シャトルバス: 臨時駐車場とJR豊後竹田駅前を結ぶシャトルバスが運行されます(有料)。
- 臨時列車: JR豊後竹田駅発、大分方面へ臨時列車が運行されます。
混雑を避けて楽しむおすすめルート
竹楽の点灯直後(16:00〜18:00)は特に混雑が予想されます。人混みを避けてじっくりと光景を楽しみたい方は、遅めの時間帯(19:00以降)の散策がおすすめです。JR豊後竹田駅を起点に、人気の「十六羅漢」や「武家屋敷通り」から巡り、最後に「廣瀬神社」へと向かうルートなどが一般的です。
まとめ|竹田の光が語る、まちと人の物語
里山から町へ、竹の命が灯りに変わる
「たけた竹灯籠・竹楽」は、里山が抱える問題を解決し、その恵みを町の美しさへと昇華させた、希有なイベントです。里山から伐り出された一本一本の竹が、人々の手によって丁寧に加工され、命を吹き込まれ、城下町を照らす温かい光へと姿を変える——その工程自体が、竹田の町と人が紡ぐ、循環と共生の物語を象徴しています。
竹楽が未来へつなぐ“光の記憶”
竹灯籠の光が照らすのは、古き良き城下町の歴史だけではありません。それは、竹田の未来に向けた「里山を大切にする心」「まちを愛する心」そのものです。この幻想的な光景は、訪れた人々の心に深く刻み込まれ、竹田の「光の記憶」として未来へと語り継がれていくでしょう。
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